将棋の符号の読み方──▲7六歩が読めれば、棋譜は読める
将棋の本を開くと、▲7六歩、△8四歩、▲6八銀──と符号が並んでいます。ここで本を閉じてしまう方が、実はとても多い。もったいない話です。符号の仕組みは座標+駒の名前というだけで、覚えることは驚くほど少ないからです。
この記事を読み終わる頃には、「▲5八金左」のような一見ややこしい表記まで読めるようになります。読みながら盤で並べて確かめられるようにしてあるので、目と指の両方で覚えてください。
盤の座標──「7六」は右から7番目、上から6段目
将棋盤のマスは「筋(たて列)」と「段(よこ列)」の組み合わせで呼びます。
- 筋は、先手(下側)から見て右から左へ 1〜9。算用数字で書きます
- 段は、上から下へ 一〜九。漢字で書きます
つまり「7六」は、右から7番目の列・上から6段目のマスです。慣れないうちに迷子になったら、「数字が筋(よこ方向の位置)、漢字が段(高さ)」と唱えてください。盤の図では、上端に 9〜1、右端に 一〜九 の座標が振ってあります。
大事な約束がひとつ。座標は常に先手から見た向きで固定です。後手の指し手でも座標の数え方は変わりません。
▲と△──誰が指したか
- ▲(または☗)= 先手。最初に指す側
- △(または☖)= 後手
「▲7六歩」は「先手が7六に歩を動かした」、「△3四歩」は「後手が3四に歩を動かした」。それだけです。▲と☗はどちらも先手の印で、意味は同じです(本によって使い分けがあります)。
駒の名前と、成った駒
符号に出てくる駒の名前は次の通りです。
- そのまま: 歩・香・桂・銀・金・角・飛・玉(王)
- 成った駒: と(歩)・成香・成桂・成銀・馬(角)・龍(飛)
ひとつ注意。将棋アプリの棋譜では、成香・成桂・成銀を杏・圭・全と一文字で書くことがあります(例:「6七圭」= 6七にいる成桂が動いた)。見た目は難しそうですが、ただの略記です。
基本形: ▲7六歩 = 手番+マス+駒
符号の基本形は「手番の印+行き先のマス+動いた駒」。▲7六歩なら「先手が、7六のマスへ、歩を動かした」です。どこから動いたかは書かれていないのがポイントで、盤面を見れば7七の歩しか7六へ行けないので省略されています。だから符号は、盤に並べながら読むのがいちばん速く身につきます。
ここに3つの記号が加わります。
「同」──直前と同じマス。相手が3四に駒を進め、それをこちらが取ったとき、「▲同歩」のように書きます。「同じマスで取り返した」の意味です。「▲同 歩」と間に空白が入る表記もありますが同じものです。
「打」──持ち駒を打った。「▲4五角打」は、持ち駒の角を4五に打ったという意味です。ルールは明快で、盤上の駒でもその位置に行けて紛らわしいときだけ「打」を付ける。紛れがなければ持ち駒を打つ場合でも「打」は付きません。
「成」「不成」──成ったかどうか。「▲2二角成」は角が2二へ進んで馬に成った手。成れるのにあえて成らない場合は「▲2二角不成」と書きます。
右・左・直、上・引・寄──同じ駒が2枚あるとき
金や銀は同じ駒が複数あるので、「どちらの金?」を区別する修飾語が付きます。これが符号の最後の関門ですが、原則は2系統だけです。
- 右・左・直: どちら側の駒か。指した側から見て右の駒なら「右」、左なら「左」、まっすぐ前に上がるなら「直」
- 上・引・寄: どちら向きに動いたか。前に進むなら「上」、後ろに下がるなら「引」、横にスライドなら「寄」
たとえば美濃囲いを作るときの「▲5八金左」。6九と4九に金が2枚いて、どちらも5八へ行ける。そこで「左側の金ですよ」と教えているわけです。
ここでも注意はひとつだけ。右・左は指した側から見た向きです。後手の「△5二金右」は、後手から見て右(先手から見ると左)の金。慣れるまでは盤をくるっと頭の中で回すか、感想盤の「盤反転」でひっくり返して確かめてください。
KIF形式なら、実はもっと簡単
アプリからコピーした棋譜(KIF形式)は「7六歩(77)」のように、移動元のマスがカッコで書いてあります。77から76へ動いた、と読むだけなので、右左や打の判断は不要です。本の棋譜(KI2形式)が読めれば、アプリの棋譜はもっと簡単、ということです。
練習: 符号を「書ける」ようになる近道
読む練習の次は、書く練習──といっても紙は要りません。感想盤の棋譜検討モードで駒を動かすと、指した手が符号になって棋譜欄に記録されていきます。「この手はこう書くのか」を逆から確かめられるので、符号はすぐ手に馴染みます。
サンプル定跡を開けば、本物の手順が符号付きで並んでいます。一手進めるたびに符号と盤面を見比べてみてください。
よくある質問
Q. ▲と☗、△と☖は何が違うのですか。 A. 意味は同じで、▲☗=先手、△☖=後手です。活字の都合や本のデザインで使い分けられているだけなので、どちらで覚えても困りません。
Q. 「7六」と「76」のように表記がバラバラなのはなぜ? A. 正式には筋が算用数字・段が漢数字(7六)ですが、Webやアプリでは「76」と両方数字で書くこともあります。位置の意味は同じです。
Q. 後手の「右」「左」はどちらから見た右左ですか。 A. 指した本人(後手)から見た右左です。先手から見ると逆になるので、初心者がいちばん引っかかるポイントです。迷ったら盤を反転して後手側から眺めると一目で分かります。
Q. 杏・圭・全という駒が本に出てきません。 A. それぞれ成香・成桂・成銀の一文字略記で、主にアプリの棋譜やネット上の棋譜で使われます。本では「成銀」のように書かれるのが普通です。
Q. 符号を覚えたら次は何をすればいいですか。 A. 棋譜並べです。符号を読みながら盤に手を再現する練習で、定跡も大局観も一緒に鍛えられます。やり方は棋譜並べのやり方にまとめています。
まとめ
符号は「手番(▲△)+マス(数字+漢字)+駒の名前」が基本形。あとは 同・打・成 の3記号と、駒が2枚あるときの 右左直・上引寄 だけです。暗記しようとするより、盤に並べながら読むのが一番の近道──読んだそばから確かめられる盤を、ぜひ使ってください。