棒銀のやり方──最初の一手として覚える、まっすぐな攻め
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将棋を始めて「そろそろ自分から攻めてみたい」と思ったとき、最初の戦法として名前が挙がるのが棒銀です。銀を棒のようにまっすぐ前へ繰り出し、飛車と力を合わせて一点を破る——狙いがはっきりしているぶん、覚えることが少なく、指していて気持ちがいい戦法です。この記事では、棒銀とはどんな攻めなのか、その基本手順、そして受け止められたときの心構えまでを順に見ていきます。
棒銀とは
棒銀は、飛車と銀の2枚で盤の一点(多くは2筋)を突破しにいく攻め方です。銀を前線までまっすぐ進め、飛車の利きと重ねることで、相手の守りに数で勝ろうという発想です。
なぜこれが最初の戦法に向いているのか。理由は、方針が最初から最後まで一本道だからです。四間飛車のように「まず囲ってから」と組み立てを覚える必要も、こまかい駆け引きも、まずは要りません。「銀を上げていって、飛車と一緒に2筋をぶつける」——やることがこれだけなので、初心者でも攻めの形をイメージしやすいのです。攻めが受け止められたとしても、どこがぶつかって、どう弾かれたのかが目に見えてわかります。うまくいった手も、届かなかった手も、次の一局の糧になりやすい。この「わかりやすさ」こそ、最初の攻めとして棒銀がすすめられる一番の理由です。
まず並べてみる
理屈より先に、盤で手を動かしてみましょう。感想盤のサンプル「棒銀の基本」を開けば、下の手順がそのまま並んだ状態から始められます。ここでは、先手も後手も飛車先を伸ばし合う相掛かり調の、原始棒銀を見ていきます。
まずは飛車先の歩から。▲2六歩△8四歩▲2五歩△8五歩と、互いに飛車の前の歩を伸ばし合います。ここで▲7八金と上がるのが、飛車先を交換されにいかないための基本の受けです。△3二金と相手も同じように備え、いよいよ攻めの主役が動きます。
▲3八銀——この銀を前へ繰り出していくのが、棒銀の心臓部です。 銀の通り道を覚えてしまいましょう。3八→2七→2六→1五、これが棒銀の銀の道です。△7二銀▲2七銀と一歩前へ、△8三銀▲2六銀と重ねていくと、飛車(2八)と銀(2六)が2筋に縦に並びます。この飛車+銀で2筋突破を狙う骨格ができれば、棒銀はもう半分成功したようなものです。後手も△8三銀〜△8四銀と同じ形で応じてくれば、盤面が左右対称になる「相棒銀」の形になります。
仕上げは端です。▲1六歩△9四歩と端の歩を突き、▲1五銀と銀を端から前線へ送り込みます。狙いはただ一つ、▲2四歩△同歩▲同銀。相手が△9五銀と反対の端で応じている間に、▲2四歩と歩をぶつけ、△同歩▲同銀と進めた瞬間が、棒銀成功の瞬間です。ここで相手が△2三歩と銀を追い返そうとしても、▲同銀成△同金▲同飛成と、銀・金・飛の総がかりで2筋を突き破れます。この一連の流れが、棒銀の一番の見せ場です。
なお、途中で相手が備えを変えてくることもあります。14手目に△9四歩ではなく△1四歩と、こちらの端をあらかじめ受けられたら、無理に1五へは行きません。▲3六歩〜▲3五銀と、銀の進出ルートを3筋へ変えます。 上がる筋が変わるだけで、飛車と銀で一点を破るという狙いは同じです。相手の受けを見て、突破口を選び直す——このルート変更まで身につけば、棒銀の骨はつかめています。
手順を目で追うより、一手ずつ自分で並べたほうが、銀の道は指に残ります。
受け止められたらどうする?
正直にお伝えすると、棒銀はいつも成功するわけではありません。相手も守りを固めてきますから、突破があっさり止められることは、むしろよくあることです。
ですが、最初のうちはそれで構わないと考えています。棒銀の目的は、一発で勝つことよりも、「攻めの形をつくって、ぶつけてみる」経験を積むことにあります。銀が弾かれたら、なぜ届かなかったのかを一つ確かめる。歩が足りなかったのか、相手の金が固かったのか。その積み重ねが、次に攻めるときの狙いを鋭くしてくれます。受け止められた局面こそ、いちばんの練習素材です。深追いして無理に攻め続けるより、一度並べ直して「どこで数が足りなかったか」を見るほうが、ずっと早く上達します。棋譜を並べ直す習慣については、棋譜並べのやり方もあわせてご覧ください。
本で深めたい人へ
盤で基本手順をつかんだら、狙いや受けをもう一歩ていねいに解説した本を一冊手元に置くと、理解が立体的になります。「なぜこの手か」まで説明された定跡書は、盤で並べる練習と相性が良いものです。
入門
藤井聡太がやさしく教える 棒銀戦法の指し方
棒銀戦法だけを一冊かけてやさしく解説する入門書です。この記事で覚えた「銀の道」と突破の形を、受けられたときの対処まで広げるのに向いています。
本を手に入れたら、感想盤を横に開いて一節ずつ並べてみてください。盤駒とちがい、途中の分岐やメモをそのまま残せます(並べた盤は個人の検討用に)。
当サイトのサンプル盤にあるのは自作の基本手順のみで、書籍の内容の転載ではありません。基本の駒組みを盤で試す →
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よくある質問
Q. 棒銀は振り飛車にも使えますか。 A. 棒銀はもともと居飛車どうしの戦いで飛車先を破る攻めですが、「銀を繰り出して一点を狙う」という考え方自体は、いろいろな戦型に応用されています。まずはこの記事のような居飛車の基本形で、銀の道と突破の狙いを覚えるのがおすすめです。
Q. 繰り出した銀を取られてしまいました。 A. 銀だけが単独で飛び出すと、相手の歩や金に狙われて取られてしまうことがあります。棒銀の要は、銀を一枚で突っ込ませず、飛車の利きと重ねてから2筋をぶつけることです。この記事の手順では、飛車(2八)と銀(2六)が縦に並んでから端へ進出しています。銀が浮いていないか、後ろに飛車がいるかを確かめてみてください。
Q. ▲1五銀と出たあとで、△1四歩と銀を追われました。 A. 引かずに**▲2四歩と突き返すのが定跡です。△同歩なら▲同銀で、銀は取られるどころか突破が一歩近づきます。かまわず△1五歩と銀を取られても、▲2三歩成**が用意の一手。△同金には▲同飛成で、銀の代わりに金を取り返したうえ龍ができますし、と金を放っておかれれば3二の金や1一の香を拾えます。「銀を捨てて、それ以上を取り返す」棒銀の有名な返し技です。なおこれは、この記事のように相手が2筋を3二の金だけで受けている形での話で、3三に銀がいる形などではそのまま成立しません。
Q. 相手も同じ棒銀で来たら、どうなりますか。 A. 互いに同じ形で銀を繰り出すと「相棒銀」になり、盤面が左右対称に進みます。先に理想の形を作り、先に2筋(または8筋)をぶつけられたほうが主導権を握りやすくなります。サンプル盤はまさにこの相棒銀の形なので、両者の狙いを見比べてみてください。
Q. 感想盤では、途中の変化も残せますか。 A. はい。棋譜検討モードなら、指し手が分岐ツリーとして残ります。本筋の突破手順と、△1四歩に対する3筋へのルート変更を、枝分かれのまま並行して保存できます。並べ直しの手間がないので、「この受けにはこう」を何度でも見返せます。
まとめ
棒銀は、飛車と銀の2枚でまっすぐ一点を破る、方針の明快な攻めです。3八→2七→2六→1五という銀の道と、▲2四歩△同歩▲同銀の突破、そして端を受けられたら3筋へルートを変える——覚えることはこれだけです。最初は受け止められても構いません。攻めをぶつけて、なぜ届いたか・届かなかったかを確かめる。その一局一局が、次の攻めを鋭くしてくれます。
戦型そのものをもっと広げたくなったら、守りから組み立てる四間飛車の定跡書をのぞいてみるのも良いでしょう。まずは、棒銀の銀の道を盤の上で一度なぞってみてください。開けば、もう準備は完了です。