美濃囲いの組み方──玉を安全な隅へ運ぶ、振り飛車の土台

振り飛車を指してみると、序盤はうまくいくのに、いつのまにか玉が薄くて寄せられてしまう——そんな経験はないでしょうか。振り飛車の勝ちやすさは、攻めより先に玉を固めておけるかで決まります。その土台になるのが美濃囲いです。飛車を左へ振ったら、玉は反対の右の隅へ。玉・銀・金の三枚をコンパクトに組むだけで、横からの攻めにめっぽう強い形ができあがります。この記事では、美濃囲いの組み方を手順どおりに追いながら、片美濃から本美濃までの流れと、どこから崩されやすいのかまでを見ていきます。

美濃囲いとは

美濃囲いは、玉を盤の右の隅に置き、銀と二枚の金でコンパクトに囲う、振り飛車の定番の囲いです。飛車を左に振る振り飛車では、玉と飛車を離すのが鉄則。攻めの飛車と守りの玉がぶつからないよう、玉を飛車の反対側へ逃がしてやるわけです。

美濃囲いの持ち味は、横からの攻めに強く、組むのが速いことです。金銀が斜めに連結していて、飛車で横から殴られても崩れにくい。しかも手数がかからないので、攻めの準備と並行して短い手数で囲えます。四間飛車でも三間飛車でも、まず組むべき囲いはこの美濃——という一枚看板の囲いです。

まず並べてみる

理屈より先に、盤で玉を運んでみましょう。感想盤のサンプル「四間飛車の基本」を開けば、下の手順がそのまま並んだ状態から始められます。四間飛車に振ってから美濃囲いが完成するまでを、一手ずつ追っていきます。

飛車を振り終えたら、いよいよ玉の移動です。振り飛車の玉は、飛車と反対側へ運ぶ——これが美濃囲いの第一歩。▲4八玉△4二玉▲3八玉△3二玉と、互いに玉を右へ寄せていきます。そして▲2八玉。玉が盤の右下の隅へ収まりました。

先手が飛車を6八に振り、玉を2八の右隅まで運んだ局面。振り飛車では玉を飛車と離すのが鉄則。987654321
13手目 ▲2八玉まで — 玉を飛車と反対の右隅へ

次は銀です。△5二金右と相手が備えるのを見て、▲3八銀。これで玉2八・銀3八・金4九の「片美濃囲い」ができました。 玉のすぐ左に銀、その下に右の金がいて、早くもコンパクトな囲いの骨格ができています。片美濃は、これだけでも横からの攻めにかなり強い、実戦十分の囲いです。

先手の玉が2八、銀が3八、右金が4九に並んだ片美濃囲いの局面。987654321
15手目 ▲3八銀まで — 玉2八・銀3八・金4九の片美濃囲い

仕上げは左の金です。△54歩に▲5八金左。左の金を5八へ寄せると、玉2八・銀3八・金4九・金5八——本美濃囲いの完成です。 二枚の金と銀が斜めにつながり、横からの攻めをはね返す土台ができました。ここまでわずか数手。攻めの形を作りながら、片手間でこれだけ固められるのが美濃囲いの強みです。

先手の玉2八・銀3八・右金4九・左金5八がそろった本美濃囲いの完成図。金銀が斜めに連結している。987654321
17手目 ▲5八金左まで — 本美濃囲いの完成(玉2八・銀3八・金4九・金5八)

手順を目で追うより、一手ずつ自分で並べたほうが、玉と金銀の運びは指に残ります。

四間飛車から美濃囲いに組む手順を盤で並べる →

もう一歩固めたいとき——高美濃・銀冠へ

本美濃で十分戦えますが、相手が上から来そうなときは、金を一つ前に進めて囲いを高くできます。4九の金を4八へ上がると「高美濃囲い」。玉の上に厚みが出て、上部からの攻めに強くなります。さらに3八の銀を2七へ上がり、金を組み替えていくと「銀冠」——上部がいっそう堅い発展形になります。

大事なのは順番です。まず本美濃まで組んでから、必要に応じて高美濃・銀冠へ伸ばす。序盤から欲張って高く組もうとすると、途中で攻められて中途半端な形になりがちです。まずは本美濃を最短で組み切る、を基本にしてください。

よくある崩され方

美濃囲いは横に強いぶん、弱点は端(1筋)と、玉の斜め上のコビンにあります。ここを知っておくと、囲いの弱点を突かれる前に手が打てます。

一つめは端攻めです。相手が1筋の歩を伸ばし、香や桂を絡めて端から殺到してくる形です。美濃は横からの攻めには強くても、盤の端をこじ開けられると玉の逃げ道が狭まります。相手が端の歩を突いてきたら、こちらも端歩を受けておく、あるいは玉が上部へ逃げられるよう早めに整えておくのが備えです。

二つめはコビン攻め。玉の斜め上(2八玉なら1七の地点あたり)は、金銀の利きが届きにくい急所です。角を成り込まれたり、桂を跳ねられたりして、この一点から食いつかれることがあります。深追いされそうなら、高美濃に組み替えて上部を厚くするのが有効です。

いずれにしても、崩されたら「どこから入られたのか」を一度並べ直して確かめるのが上達の近道です。同じ形で二度崩されないように、弱点だった筋を覚えておきましょう。並べ直しのコツは棋譜並べのやり方にまとめています。

よくある質問

Q. 美濃囲いはどの戦法で使いますか。 A. 主に振り飛車で使います。四間飛車・三間飛車・向かい飛車・中飛車など、飛車を左へ振る戦法では、玉を右隅の美濃に収めるのが基本です。まずは四間飛車で美濃囲いに組む形を覚えるのがおすすめです。

Q. 玉はどこまで囲えばよいですか。 A. まずは本美濃(玉2八・銀3八・金4九・金5八)まで組めば実戦十分です。相手が上から攻めてきそうなら、金を4八へ上げて高美濃に、さらに堅くしたいなら銀冠へ発展させます。ただし序盤から高く組もうとせず、本美濃を最短で完成させることを優先してください。

Q. 美濃囲いの弱点はどこですか。 A. 端(1筋)と、玉の斜め上のコビンです。横からの攻めには強い反面、端攻めや角・桂によるコビンへの食いつきに弱いという性格があります。相手が端歩を突いてきたら受けておく、上から来そうなら高美濃に組み替える、が基本の備えです。

Q. 居飛車でも美濃囲いに組めますか。 A. 組めますが、居飛車では玉を左へ囲う舟囲い〜矢倉・穴熊などが主流です。美濃囲いはあくまで「玉を飛車と反対側へ」という発想の囲いなので、飛車を左に振る振り飛車といちばん相性が良い、と考えてください。

Q. 感想盤では、途中の形も保存できますか。 A. はい。棋譜検討モードで並べれば、片美濃から本美濃、さらに高美濃への組み替えまでを分岐ツリーとして残せます。「この相手にはここまで固める」を何度でも並べ直して見返せます。

まとめ

美濃囲いは、玉を右の隅へ運び、銀と二枚の金でコンパクトに固める、振り飛車の土台になる囲いです。玉を飛車の反対側へ(▲2八玉)、銀を上げて片美濃(▲3八銀)、左の金を寄せて本美濃(▲5八金左)——覚える手順はこれだけ。横からの攻めに強く、短い手数で組めるのが持ち味です。弱点の端とコビンを頭の隅に置きつつ、まずは本美濃を最短で組み切る形を、盤の上で一度なぞってみてください。

囲いを覚えたら、次は攻めの形です。角道を止めずに攻める三間飛車・石田流は、同じ美濃囲いのまま攻めの理想形を作れる、四間の次の一歩になります。

四間飛車から美濃囲いに組む手順を盤で並べる →